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♢異世界転生と妹との出会い
部屋で寝ていたはずだった。だが、目覚めると自分の寝ていたベッドに部屋ではないことに気づく。視界に飛び込んできたのは、豪華絢爛な装飾が施された、広々とした空間だった。
(まるで……これって……中世のお城か貴族の屋敷の部屋じゃんっ!?)
ぼんやりと周りを見回し、頭の中でアニメやゲームの情景を思い浮かべていた。
周りの豪華な部屋を見て夢かと疑うが、背中に感じるベッドのフワフワとした柔らかな感触と、窓から差し込む陽の光の温かさが、これは紛れもない現実だと実感させた。鳥のさえずりが微かに聞こえ、風がカーテンを揺らす音がする。
自分の体をゆっくりと起こし、じっと見つめる。すると、その体は以前の自分と比べて完全に若返っていて、幼い子供の姿になっていることに気づいた。これからのこの体で過ごすことを考えると、嬉しいやら不便そうにも感じた。
「この部屋を使っているとなると、さっきも思ったが金持ち確定じゃないのか? それに、かなりの権力者の子供だよね……」
部屋から感じられる豪華さや、若い体を手に入れた自身の未来に対する期待と、若干の戸惑いが入り混じっていた。
若い体を手に入れたのは理解できた。だが、どんな容姿になっているのか不安な思いを抱きつつベッドから下りた。部屋にあった豪華そうな姿見の鏡へと歩み寄り、自分の姿を映してみる。
(え? わぁっ。なに……誰、これ? お、俺なのか? えぇ? え……!? めっちゃ、か、可愛い……じゃん!?)
鏡の中にいたのは、まるで童話から抜け出したような子供だった。淡い金髪は絹糸のようにさらさらと揺れ、頬は桃のように柔らかそうで、青い瞳は朝の空よりも澄んでいた。小さな顎、丸みを帯びた頬、長い睫毛――どこを見ても、完璧に“可愛い”が詰まっている。
「……え、これ……俺なの?」
思わず声が漏れた。鏡の中の“俺”が、少し首を傾げた。その仕草すら、反則級に愛らしい。
「いやいやいや、待て待て……えっと……俺、男だよな? これ、女の子じゃ……ないのか? こんな可愛いとか……映画の世界でしか見たことないぞ……しかも金髪とか輝く透き通る青い瞳って」
頬が熱くなる。自分の顔に赤面するなんて、人生初だった。
(えっと……これは、確認しないとだよね……)
ドキドキしながら、豪華な子供用のネグリジェのようなパジャマの上から、そっと触れて確認すると……
「……あ、付いてる……俺、男の子だ……」
触りなれたモノが付いていて安堵と、少しばかりの残念な気持ちが混ざり合う。
ボーっと鏡に映る自分の可愛らしい顔を眺めていると、コンコン、と控えめなドアのノックの音にハッと我に返った。心臓が跳ね上がり、驚いて慌ててベッドに戻り、慌ただしく寝たフリをした。
ベッドに寝ていると、知らない女性が優しく穏やかな声がかけられた。
「レイニー殿下、朝ですよ。起きてくださいませ。お外は良いお天気です」
目をゆっくりと瞼を開け、声がする方を見ると、メイド服を身につけた可愛らしい女性が立っており、レイニーを優しいまなざしで見つめていた。その表情や仕草には、敬意や細やかな配慮が感じられる。
メイドさんが、呼びかけている名前からすると、俺はレイニーというらしい。起きて少し会話をしていたら、どうやら俺は『殿下』と呼ばれているし……王族らしいぞ? マジか……すげぇ。貴族じゃなくて王族かぁ……。
レイニーは、王族という響きに胸が高鳴り、心の中で小さくガッツポーズをした。お貴族様のさらに上の存在だよね? なんだか想像するとニヤけてしまうが我慢だ。メイドさんが、まだ目の前にいるし、怪し過ぎるよな。レイニーは、必死に表情を引き締めた。
メイドさんに案内されて朝食を食べに食堂へ向かった。食堂へ行けば、何か情報収集ができるだろうと期待していたのだ。だが誰もいなく、豪華で大きなテーブルに料理が所狭しと並んでいるだけで、広くて豪華なスペースで一人で食事をすることになった。まぁ、これはこれで助かったのかも。いろいろと話をして、怪しまれてボロが出ちゃいそうだしなっ。レイニーは、内心で安堵の息を漏らした。
部屋に戻り、着替えをして……って、えぇ!? なに……この服装は!? レイニーは、目の前の服を見て、思わず声を上げそうになった。幼い子供で、中性的な感じだから許されるけど……それにしても、これは……少し可愛すぎじゃない? まぁ……似合ってるから良いけどさぁ、俺、男の子だよ? フリルやリボンがふんだんに使われた、まるで女の子が着るような可愛らしいデザインに、レイニーは戸惑いを隠せない。
メイドさんがニコニコしながら俺を着替えさせてくれるのは嬉しいけど、これメイドさんたちの趣味じゃないか? フリルが付いた可愛いシャツに……可愛いデザインの半ズボン。んで、健康そうな色白の太ももに、メイドさんたちの目線を感じるのは気のせい? 彼女たちの視線が、熱を帯びてレイニーの肌にまとわりつくような錯覚に陥る。
その岩の割れ方は、まるで誰かが強大な力で割ったようだった。こんなパワーを持つ人間を見たことも聞いたこともない。もし、そんな人間がいたら軍が見逃さずにスカウトしているだろうし。それか、冒険者の中にいるのかもしれない。レイニーは、その圧倒的な力に想像を巡らせた。「ここから入れそうだよ?」 エリゼがニコッと言ってきた。さすが、冒険者志望だね。しかも責任回避をして俺に行かせようとしているしぃー。俺なら何でも許されると思っているのか? 今のところは許されているけどさ〜♪ レイニーは、エリゼの行動に、面白さと、わずかな呆れを感じた。 まあ、こんな面白そうな所を見つけたら、誘われなくても行くでしょ。「一緒に行く?」 レイニーは、エリゼならついてくると分かってて笑顔で聞いた。「……うぅ……こんな所で、わたしを一人にするの?」 エリゼがレイニーの服をそっと掴み、不安そうに見つめてきた。その瞳には、心細さが滲んでいる。「エリゼなら大丈夫じゃない?」 レイニーは、エリゼの反応が可愛くて……ついついイジワルなことを言ってしまう。「いやぁ。大丈夫じゃなーい。一緒に行くぅー!」 可愛い頬を膨らませたエリゼが言ってきた。「だよねぇ〜」「うん♪」 二人で顔を見合わせて頷き、ニコッと笑った。このパーティでは、エリゼが止める役だったが、俺と一緒にいることで影響を受けてしまっていて、今では止める人がいないので危ないかもしれないな。レイニーは、今後のエリゼとの冒険に、若干の不安と、それでも期待を抱いた。♢洞窟の探索 洞窟に足を踏み入れると、まず湿った空気が肌にまとわりついてくる。冷たく湿った石の壁には、所々に苔が生え、ゆっくりと滴り落ちる水滴の音が洞窟内に響き渡る。洞窟内は薄暗く、アイテムボックスから取り出した松明の明かりがぼんやりと前方を照らす。壁に空いた亀裂や足元の不規則な石の配列が、ここが自然の力でできたものであることを物語っていた。その光景は、
軽食を摂り、少し元気が出たのでアイテムボックスから剣を取り出しエリゼにも渡した。実力は少年兵よりは高いから、少しは頼りになると思う。……お遊び程度の魔物しかでてこないと思うけど。この辺りの魔物の反応が、低級の魔物の反応しか無いし。これなら二人で楽しみながら山頂に向かえるかなっ。レイニーは、山の気配を探索し、状況を判断した。「さー、出発しよー♪」「はぁいっ!」 エリゼは、元気いっぱいに返事をした。 小さい魔物が現れると、二人で顔を見合わせてニヤッと笑った。「どうする? エリゼも戦いたいんじゃない?」「わたしに倒せるかなぁ〜?」 エリゼはそう言うけど、顔が笑ってるじゃん。しかも剣を構えてるし……。レイニーは、エリゼの興奮を感じ取った。「どーぞー♪」「……う、うん。えいっ!」 エリゼは、シュパッ!と剣を振り下ろし、一撃で魔物を討伐できた。その剣筋は、見事なほどに鋭い。「わぁーい! 倒せた! ねえ、見た?見た?」 エリゼは嬉しそうに振り返り、満面の笑顔で聞いてきた。昨日の森とは雰囲気が違い、不気味な雰囲気もないし。その瞳は、達成感に輝いている。「うん。余裕そうだね〜!」 というか、さすがセリオスの娘で剣の扱いが慣れていて剣がぶれていないし、剣のスピードが早い。レイニーは、エリゼの才能に舌を巻いた。「まぐれだよー」 エリゼは謙遜してるけど、日々の訓練の成果だと思う。これだと、俺の出番が無くても良いのかもなぁ〜接待の魔物の討伐だなぁ。日頃の感謝の気持を込めて、エリゼに付き合おう♪ レイニーは、エリゼの成長を喜び、温かい気持ちになった。「次は、お兄ちゃんね!」「俺は、帰りで良いよ〜。二人で疲れちゃったら、強敵が出た時に困るでしょ〜」 エリゼが楽しそうだったので、今は遠慮しておこうかな。レイニーは、エリゼに花を持たせることにした。「あぁ〜そっかぁ。わかった! 行きは、わたしが頑
「はいっ! もちろんですっ♪ おとーさまっ」 レイニーは、そう言いながら国王に駆け寄り、抱きついた。それで、甘えておこうっと♪ 国王の服の感触が、幼い体に心地よい。「うむ。だが、キケンなことはするでないぞ!」 抱きつかれて、苦しそうな声を上げる国王の声が鳴り響いた。その声には、レイニーへの愛情と、それでも厳しさを教えようとする親心が感じられる。「はぁーい!」 レイニーは元気に返事をして、しばらく甘え続けて部屋に戻った。♢山への道のり ……翌日。 早朝から用意をしておいた馬車に乗り込み、エリゼと馬車で山へ向かった。 ちゃんとした送迎用の馬車で、王国の紋入りではなく普通の一般的な送迎用の馬車だ。一般人は……馬車には乗らないけどね。「わぁ! ちゃんとした馬車なんて初めて!」 エリゼが窓の外を眺めて、嬉しそうに声を上げた。前回乗ったのは兵士を護送するタイプの馬車だったしね。その瞳は、新しい体験に輝いている。「あはは……たぶん……10分もすれば具合が悪くなると思うよ……。この直に来る振動に揺れがキツイんだよね」 レイニーは、経験からくる予感を語った。「えぇ〜楽しいじゃん♪」 エリゼが、左右の窓に行ったり来たりして楽しそうに過ごしていた。その無邪気な姿に、レイニーは頬を緩めた。 …………。 ………………「あ、あぅ……」とエリゼが声を上げた。馬車が道に転がっている石に乗り上げ、たまに大きな振動が直におしりと腰にくる。その衝撃は、馬車全体を揺らし、乗員の体を突き上げた。 ………………。
「そうかな? 魔物がよく現れるらしいよ」 レイニーは、あくまで冒険者ごっこにこだわる。冒険者ごっこなら……魔物と戦えればいいと思うけど? もう目の前だしぃ……。山に行くのは明日でいいじゃん。「うん。そんな感じがする……不気味だし、入ったらダメな気がするよ……」 エリゼが怯えた表情で言ってきた。その声には、強い拒絶感が滲んでいる。 せっかく苦労して辿り着いたのに〜勿体ないじゃん。レイニーは、少しばかり残念に思った。「少し進んでみようよ。それで、ヤバそうだったら引き返そー♪」 レイニーは、エリゼを説得しようと提案した。「えぇ……うん。わかったっ」 レイニーの押しに押されて、エリゼは仕方なさそうに返事をした。その声には、諦めと、それでも兄への信頼が混じっている。♢森の奥へ 普通の森とは違い、不気味で薄っすらと靄がかかっている。魔物の住む不気味な森は、昼間でも薄暗く、どこか現実離れした雰囲気を漂わせている。森の中に一歩足を踏み入れると、魔物のテリトリーに入った感覚を感じた。すでに、あちらこちらに小物の魔物が彷徨いているのが見える。 湿った土の匂いと腐葉土が混ざり合った独特の香りが鼻をつく。木々は異様な形をしており、曲がりくねった幹やねじれた枝があたりを覆い、まるで生きているかのように感じられる。その光景は、レイニーの好奇心を刺激した。 風が吹くたびに葉がざわめき、不気味な囁き声のように聞こえる。苔むした石や木の根元には、奇怪なキノコや見たこともない植物が生えており、その中には毒々しい色をしたものもある。地面には生き物の足跡が点々と残っており、その形がどれも一様ではなく、何か恐ろしいものが潜んでいることを示唆している。その雰囲気は、エリゼの恐怖を煽った。 魔物の存在は確実だったので、結界を自分とエリゼに張り、歩みを進める。念のために害意を感じると、自動で反撃するように魔法を複数発動準備をさせておいた。頭上には複数の小
「あー助かるよ。借りてくね〜♪ あ、でも……借りた剣は、ちょっと……ここまで返しにこれないから……そうだ! セリオスに渡しておくから取りに来てくれる?」 レイニーは借りた剣を受け取り、城に帰ったらエリゼを送り届けた時に、剣も渡しておけば返してくれるでしょ、と内心で思った。「……へ? え? いやいや……セリオス様って……騎士団長のですよね?」 副所長が、顔色を悪くしていた。今更って感じだと思うよ、その娘のエリゼの扱いも雑だったし〜。レイニーは、副所長の反応に内心で呆れた。「そうそう」 レイニーは、あっけらかんと言った。「レイニー様、普通の一般兵が、セリオス様とお話をするのは厳しいかと……」 副所長が俯き呟いた。そうかな……今は、一般兵の練習を見てるけど? まあ……周りは凍りついた様子になってたが。レイニーは、副所長の言葉に首を傾げた。「じゃあ、王城の警備部隊に預けておくよ〜」「はい、それなら問題ないです」 副所長がホッとした顔で返事をした。その表情からは、安堵の色が読み取れる。「それと……女性の事務作業員も解雇ね。仕事もせずに楽しいお話で給金を不正に得ていたんだから……あ、それもお父さまに任せるから良いか。俺よりも、厳しい罰を与えると思うから……じゃあね〜」 それを聞いた女性職員が、青褪めた顔をして座り込んだ。その顔は、絶望に染まっていた。 ま、自業自得でしょ……所長の権力で従わされていたとしても、給金は税金で支払われてるんだしさぁ。レイニーは、冷徹にそう判断した。「エリゼを呼んできてくれる? 出掛けるからぁ〜♪」 兵士たちが慌ただしく動き出し、相手はセリオスの娘だと知
「あぁ……これ」 レイニーは、そう言い、チラッと国王の紋章の入ったナイフを見せると、警備隊長が慌てて跪いた。その動作は、まるで機械仕掛けのようだった。「あ、それは良いから……エリゼの護衛を部下の人に頼めるかな?」 出入りの多い、詰め所の前だったのでエリゼを放って置くと連れ去られたら困る。レイニーは、エリゼの安全を最優先に考えた。「はっ! かしこまりました!」 警備隊長は、震える声で答えた。 エリゼが警備兵に囲まれ、応接室へ連れて行かれた。勝手に応接室を使われて、所長はムスッした表情で近寄ってくると文句を言い始めた。その顔は、怒りで歪んでいる。「城門の警備隊長だから多めに見ていたが、許可なく勝手に応接室を使うとは……無礼だぞ、俺たちは王都の警備部隊所属で別の管轄だぞ! あとで厳重に王都警備隊長に報告し、文句を言ってもらうからな!」「あーそれは、出来ないと思いますけど〜?」 レイニーが、後ろで腕を組みそっぽを向いて、二人の会話に口を挟み元所長に言った。その声には、どこか冷たさが混じっている。「……なんだクソガキ、まだいたのか!? 子供の口出しする話じゃないぞ。おい! 副所長、このガキを外に放おり出せ! 邪魔だ!」 所長は激怒した表情で、顔に血管が浮き出ているって……こんな感じなんだろうなぁ……という表情をしている。その怒声は、詰め所全体に響き渡った。 レイニーと隊長の話を聞いていた副所長は、堂々と無視をした。その顔には、迷いと、それでもレイニーへの警戒が読み取れる。「おい! 聞こえんのか!? 俺は、ガキをつまみ出せと命令をしているんだぞ! 上官からの命令無視は、厳罰だぞ! 貴様! 命令だと言っているだろ!」 所長の声は、怒りで震えている。「だよね。命令無視は厳罰だよね……? 警備改革を無視して改善が出来てないんじゃないの? 王都警備隊長